• 2018.03.15
  • コラム

「これからの生産管理」

グローバル・ネットワーク協議会 分野別エキスパート(航空機)
(一社)神戸市機械金属工業会 神戸航空機クラスタープロジェクト担当 チーフアドバイザー
赤 信彦

 ①はじめに
「ICT」(情報伝達技術)、「IoT」(モノのインターネット)、「AI」(人工知能)等、流行語の如く耳にし、製造業のみならず、物流、アパレル、購買等、多分野にわたり影響をもたらしている。製造業界においても、情報のデジタル化、ネットワーク化は、製造システムに変革をもたらし、その効果も大いに期待されている。

②これまでの生産管理
 鉄鋼、自動車の量産化とともに、生産管理は大きく発展してきた。とりわけ戦後の日本で誕生した「JIT」(ジャストインタイム)、「カンバン方式」は、世界の多くの製造業の基本となり、「QCD」(品質、コスト、納期)の管理、改善のみならず、不良在庫、不良仕掛りの改善等、健全な経営体制の維持に必要不可欠なシステムとなっている。
「JIT」は、日常的に行われる厳しい改善活動(工期短縮、工数低減、品質向上、設備保全)に支えられ、自動車業界を筆頭に大きな成果を上げてきた。
航空業界でも、約30年前より「JIT」、「カンバン方式」が導入され、欧米の航空機メーカー工場で‘KAIZEN’、‘3S’等の文字が大きく表示され、大型航空機もムービングラインが取り入れられ、流れ作業で組立製造されている。

③これからの生産管理
20年後には、世界で約4万機の民間航空機が飛び交い、航空ビジネスも約2倍に拡大し、「QCD」の競争、要求が更に厳しくなっていくと予測される。技術力、「QMS」(品質マネジメントシステム)は当然の必須項目で、更に「生産管理システム」「QMS」、「資材システム」「経理システム」等と連携した「ERP」(企業リソース・プログラミング)によりリソース(人、設備、資金、材料、補材等)の計画・実績管理・レビューを定期的に実施し、「PDCA」(計画、実行、評価、改善)スパイラルを定期的に回し続けることが、依然として重要なポイントと思われる。

④「生産管理システム」の参考例
・大手の重工メーカの航空部門では、「もの」と「情報」の流れを確立し、「ICT」、「IoT」を用い、(P):生産シュミレーション、自動スケージューリング、(D):作業指示、(C):生産状況の実績収集、問題点分析、(A):作業改訂というPDCAサイクルに基づく、大規模なシステムが構築されている。
・ERPも大企業を中心に浸透してきているが、中小企業でのニーズもあり、いくつかのシステムが市販されている。イメージの例を、航空用、中企業用にアレンジしたものを参考までに添付する。


⑤まとめ
自動車、重工業の代表的なあるメーカーは、“「ICT」、「IoT」、「AI」は、ツールの1つであり、目的ではない。目的は、今まで通り日常的な改善活動による「QCD」の向上である。”と明言している。
基本に戻り、改善活動、「PDCA」のスパイラルを繰り返し等、製造業の原点を再確認する必要がある。その上で、「ICT」、「IoT」、「AI」による相乗効果が得られると思われる。
「生産管理システム」は、個社の個性、インフラ、担当者の個性等の影響が大きく運用面で多くのメーカーが問題を抱えている。また航空用は、トレーサビリティ、QMS等が厳しいため、工程表等の入力データが多く、何人か専任の経験者が必要である。また、これまでの生産管理方法も踏襲し、尚且つ改善、レベルアップを織り込んだ、システムカスタマイズが必要で、個社に適したシステムが好ましい。特に中小企業では、IT以外のハードルもあるようである。

*AIが人類を超えるといわれる「シンギュラリティ」(技術的特異点)の到来は、もう少し時間を要するのであろうか。